【考察】油屋は半径3m以内にある【千と千尋の神隠し】

連日、『千と千尋の神隠し』の考察を書いています。

丁度、舞台もしていますので、色々と考えていきたいと思います。

今回は、物語の舞台となる油屋についての考察です。
1つの仮定を軸にして考えたので是非見て行ってください!

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油屋のモチーフはジブリなのか

イメージアルバムの中に『油屋』という曲があります。

従業員視点の曲ですが、とても実感のこもった歌詞の様に思います。

宮崎駿は「企画は半径3m以内にたくさん転がっている。」と語っていますが、

自分の働いている「スタジオジブリ」のことを書いているのではないかと思えるのです。

まずは歌詞を見て欲しいと思います。

『油屋』の歌詞に答えがある

さっき寝たと思ったら もう仕事だ

終わったと思ったら もう始まりだ

身体は重いぜ 気持ちはもっと重いぜ

仕事がある内が 華なんだってお前さん

婆ちゃんが言ったよ

さっきまで娘だった婆ちゃんが

綺麗なのは若い内だけだよって

爺ちゃんが言ったよ

さっきまで若かった爺ちゃんが

残るのは人生だけさ

重くてだるい人生だけだってさ

『油屋』 歌:上條恒彦 
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宮崎駿を追ったドキュメンタリーなどを見ていると大抵歌詞の赤字のようなことを言っています。

これは宮崎監督自身のことを言っている歌詞で間違いないでしょう。

そして、この歌詞が書かれた曲名が『油屋』になっているということは、宮崎駿が働いている

『スタジオジブリ』=『油屋』

と見ることができます。

そう考えて、油屋のことを見直し、ジブリのこととして置き換えていけば、

「半径3m以内」のお話として出来上がるのではないでしょうか。

「キャバクラ」論について

巷では、『油屋』=『キャバクラ』論をよく見ます。

でも、監督自身の言葉にはそのワードを彷彿させる言及はないんです。

それもあり、個人的にはピンと来ていなかったので、この歌詞を見て納得しました。

歌詞を書いているのは宮崎駿自身ですから。

皆さんはどう思いますか?

油屋の構造について

物語のメインである油屋、その構造についても見ていこうと思います。

階層に分けてみる

『ジブリの教科書13 ハウルの動く城』の中で、鈴木敏夫さんが次の様に言っています。

宮さんは内装から描き始める人です。ある部屋の中を描き、次に別の部屋をくっつけて、あとから外観を決めていく。

このため、宮崎監督の描く象徴的な建物は、全体としてのまとまりよりも、入れたいものを入れた階層のあるものになりがちです。

ラピュタも層に分かれています。↓記事の「ラピュタは上下で分かれている」参照です。

【考察】2つの王家から考える『天空の城ラピュタ』

油屋は複雑に見えて、何を見せたい階層なのかを考えれば、整理できます。

物語がどこで進んでいるのかを理解する助けになればと思います!

上層:湯婆婆、坊

最上層には経営者である湯婆婆や、その息子坊の部屋があります。

ここだけ、内装は西洋風な趣が出ています。

中層:客室

千尋と白い大根の様なおしら様がエレベーターに乗って、上がった時に、

「二天」で一度降りますが、静かな様子でした。

深読みも何もなければ、神様たちが休んでいると考えられます。

中層崖側:従業員寮

夜に、軒下で千尋とリンが談笑しているシーンから、先程の客室の裏側と推測できます。

下層:銭湯

油屋のメインになる部分ですね。吹き抜けになっており、上の階では神様の宴会が行われています。

地下:ボイラー室

コンクリート剥き出しでできています。

釜爺、ススワタリが働いています。

釜爺については、この記事を書きながら思うことがあるので、また書こうと思います。

奈落:用済みの者達

ハクが上層から穴で落とされた時に、黒い影が沢山いました。

これまでにも、湯婆婆によって始末された者達の成れ果てと思われます。

でも、最上階から地下より下の空間へつながる場所がどこにあるのかは、筆者には分かりませんでした。

下にいる者ほど地位が低い

全部がそうとは言い切れませんが、概ね、下の階層にいる者ほど油屋の中での地位が低い様に思います。

内装の雰囲気も上に行くほど豪華ですしね。

看板「後楽」について

下層の真ん中に、大きく「楽後」と書かれた看板があります。

おそらく、漢文だと思い「後楽」を調べてみると、

上に立つ者として、世間一般の人たちが楽しんだ後に楽しむこと。

『精選版 日本国語大辞典』

とあります。

油屋の客として来る神様達は現実世界での疲れを癒そうとやってきています。

神様も頑張ったんだから、少しぐらい楽しもうよと言っている様ですね。

閑話:漢文からの考察

また、元になっている漢文を「返り点」(分からない人用にリンク貼ってます)有りにすると、次の様になります。

二天下之憂一而憂、後二天下之楽一而楽

看板の位置はエレベーターにあった「二天」の下に当たります。

偶然の一致とは思いますが、意識されていたら面白いですね。

また、物語冒頭の時計塔の下には「復楽」の文字があります。

この関連についてもまとめてみました!

【考察】謎の言葉「復楽」とは何か【千と千尋の神隠し】

まとめ

歌詞に絡めた考察はあまりないと思い書きましたが、どうだったでしょうか?

宮崎駿の言っている「半径3m」論には続きがあって、

「自分の半径3m以内で起こっていることは、日本中で起こっている。」

だから、自分の周りの話も、突き詰めれば誰もが共感できる話になるということだと思います。

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